2022年8月22日月曜日

書評:アラン・テイラー著、橋川健竜訳『先住民vs帝国 興亡のアメリカ史ー北米大陸をめぐるグローバル・ヒストリー』

 『西洋史学』273号(2022)にアラン・テイラー著、橋川健竜訳『先住民vs帝国 興亡のアメリカ史ー北米大陸をめぐるグローバル・ヒストリー』(ミネルヴァ書房、2020年)の書評を書きました。思い切った訳のタイトルにしたと思いますが(原題はAmerican Colonies:A Short Introduction)、内容の広がりと現在の学会の動向をとらえた意義あるタイトルかと思います。それにしても『西洋史学』の今号の書評の充実っぷりはすごい。。

興味のある人はコメントください。PDFをお送りします。

(森)


2022年8月11日木曜日

文献:先住民と海の歴史

 高橋さんが船乗りの史料と新しい文献をご紹介してくださって大変に有益で、依然として海の歴史は盛んな領域だとわかります。猛暑の中、海の歴史を考えると多少涼しくなるような・・・

先住民関係でも、ここ数年で何冊か先住民と海洋世界に関する本が出されています。従来から捕鯨に関しては研究がありましたが、特に北東部の先住民が盛んな沿岸通商を行なっていたり、海上で軍事力を行使していたことが明らかになっています。ニューイングランドでは、17世紀までには、寒冷で穀物の取れない最北端(現在カナダの)ペノボスコットの先住民とNE南部の先住民の間で毛皮と穀物を交換する地域間分業も成立していました。他方、ノヴァ・スコシアのミクマクはメインの先住民を攻撃し、壊滅に追い込んでいます。

下記の本は、そうした先住民の世界にピューリタンは入って来たと想定して、従来の歴史像を見直すものです。

Andrew Lipman, The Saltwater Frontier: Indians and the Contest for the American Coast 



リップマンのThe Saltwater Frontierは、NE南部における通商と漁業を中心とする先住民の海洋活動とヨーロッパの進出を扱う地域史。「フロンティア」という言葉も、複数の文化の接触や対立をの場を意味していて、先住民間/ヨーロッパ人間の複雑な関係性を描いています。例えば、この地域で生産されるワムパムは、貨幣として先住民に普及し、毛皮交易から莫大な富を生み出していました。だが生産できるのはごく一部の先住民にすぎず、その支配をめぐって先住民とイギリス人、オランダ人が争います。
この作者がWilliam and Maryに書いた首切りの論文も非常に優れた論文でお勧めです(Lipman, Andrew. “"A Meanes to Knitt Them Togeather": The Exchange of Body Parts in the Pequot War,” WMQ, 3rd, 65-1, 2006.)




Matthew R. Baher, Storm of the Sea: Indians and Empires in the Atlantic's Age of Sail


こちらはベイハーのStorm of the Sea。メインからノヴァ・スコシアにかけての先住民の海洋軍事力を扱った本です。メインの先住民は18世紀になっても強力な軍事力と交渉力で勢力を保ちますが、その秘密は、彼らがヨーロッパの帆船などの船舶技術をも取り入れて(分取るわけですが・・)、入植者の拠点を攻撃できたことにあるとしています(下の絵を参照)。

実際、この地域の海上、特に沿岸ではイギリスが優位に立てず、海賊退治のためには、先住民に依拠したとのエピソードもあります。やや偏りのある記述のきらいもありますが、これまた先住民のイメージを大きく変える著書です。









2022年7月24日日曜日

マサチューセッツの船乗り、Benjamin Bangsと帝国

 


 森先生から招待いただきました、九大修士2年の高橋と申します。帝国史の観点から海軍強制徴募と初期アメリカの船乗り研究をやっています。どうぞよろしくお願いします。


 先生方、数々の貴重な史料・文献・学会などの情報を紹介下さり、感謝申し上げます。まだまだ勉強不足で、情報集めに四苦八苦しているので大変助かります😂


 さて、私のほうからは史料読解の成果を挙げていければと考えております。現在、修論に向けて船乗りの日記を読んでいるところです。Massachusetts Historical Societyのオンラインカタログから、森先生にご協力いただいてみれるようになった史料です。


Pre-Revolutionary Diaries at the Massachusetts Historical Society, 1635-1790 (masshist.org)


↑この日記集に所収されているベンジャミン・バングス(Benjamin Bangs)という船乗りの日記です。


 Transcript of Benjamin Bangs Diary, 4 volumes, 1742-1762, Ms. N-1797, in Massachusetts Historical Society Pre-Revolutionary Diaries Microfilm P-363, reel 1.19-22; Genealogy of Benjamin Bangs, Massachusetts Historical Society, Boston.


 バングスはマサチューセッツ植民地バーンズダブル郡ハーウィッチに住んでいた白人ピューリタンで、捕鯨や漁業に携わる船のオーナー(祖父や曾祖父も船のキャプテンだった模様)でした。初期ピューリタン(おそらくイングランドからプリマスに移住)の子孫で、墓石(下画像)も残されております。白人の多いマサチューセッツの典型的な多数派だったといえると思います。


(出典 Benjamin Bangs (1721-1769) - Find a Grave Memorial 最終閲覧2022/07/24)


 彼は22歳のときから日記を書き貯め、①1742-49、②1759-61、③1761-63、④1763-65の計4冊が残っています(残念ながら1750-58の期間のものは消息不明)。


 私はいわゆる「第一次帝国」期に関心があるので、①を読み進めているところですが、海軍強制徴募(naval impressment, 史料だとpressやprest, impressedなどの単語で登場する)に関する話が散見されます。


 バングスの史料自体のうち①は船乗りの日常史(Magra 2009)などで引用されてきました。 

    

 最近では、アメリカ独立革命史を帝国史や大西洋史の成果も踏まえて強制徴募と民衆暴力の観点から描き切ったクリストファー・マグラの著作(Magra 2016)で、1747年のボストン反強制徴募暴動やそれ以前の強制徴募の目撃証言の記述が引用されています。

 ↓日記の形式はこんな感じです。

 


 左縦一列に日付が書かれていて、大体1日1~3行ずつのその日の内容が書かれています。日々の風向きや天気、漁業や取引の成果などが多く書かれているので、日記というより航海日誌の側面も強いのですが、本人が冒頭で


「ベンジャミン・バングスの人生に関するメモと端的な記録。自己満足のためにいくつかの報告書と注目すべき出来事も含む。a memorandum or short acc[oun]t of my Life of Benj[ami]n Bangs containing some Transactions and most Remarkables for my own satisfaction」(冒頭2ページ)


と書いているように、フランスの私掠船や強制徴募との遭遇についてや、本国のニュースもときどき書かれています。


 例えば以下の一節。

「私たちはボストンに到着し、激しいホットプレス(緊急強制徴募)を恐れて麦の中に隠れた。We came out and got to Boston & hid in the oats for fear of the press which is very hot.」(1743/10/19, 20)

 ボストンで強制徴募に遭遇しかけたバングスは、船に積んでいたであろう麦の中に隠れています(この前の日に、粉屋と一緒にボストンに向かう予定だと書かれていました)。バングスは1740年代の間に何度もこの強制徴募に関する記述をしておりますが、当時ブリテン帝国を支えた王立海軍のリクルート手段である強制徴募との遭遇が決してまれではなかったことが垣間見えます。


 他にも、船の乗組員として先住民を抱えていたり、1760年代には奴隷貿易に携わっていたりと、マサチューセッツの白人ピューリタンながらも最近のアメリカ史研究でホットな観点から色々分析できそうな面白い史料だと思っています。さらには、宗教史(ニューライトやホィットフィールドに関する記述あり、Winiarski 2017)の文脈でもこの史料の研究が進みつつあるようです。


 マサチューセッツという、古来は「普遍」的なモデルだとされ、グリーンらによってヴァジニアなどとの比較からかえって「特殊」だとされた植民地の中にも、船乗りというミクロレベルの視点を主軸にしつつ、大西洋史や帝国史の観点、さらには人種などの観点から切り込める余地があるのでは…と思って読解を進めております。手稿史料なので文字起こしから始まり大変ですが、今から200年近くも前のひとびとの書いたものを掘り起こしていると思うと感慨深いものがあります。

 未熟な若輩者ですが、ためしに投稿してみました。先行研究の理解や史料分析に関して、浅いところも多いかと思います。なにかお気づきの点がありましたらコメントでご助言等いただけると大変有難いです。

 今後も史料読解の成果の一部を少しずつ投稿してみようかと存じております。

 どうぞよろしくお願いします。


<参考文献>

 Magra, C. P. 2009: The Fisherman's Cause: Atlantic Commerce and Maritime Dimensions of the American Revolution. Cambridge.

   Magra, C. P. 2016: Poseidon's Curse: British Naval Impressment and the Atlantic Origins of the American Revolution, Cambridge.

 Winiarski, D. 2017: Darkness Falls on the Land of Light: Experiencing Religious Awakenings in Eighteenth-Century New England, North Carolina.


 (高橋)

2022年7月22日金曜日

AMERICA 2026


https://www.america2026.eu


独立宣言250周年の2026年が近づいていますが、アメリカだけでなく、ヨーロッパでも250周年プロジェクトが着々と進められています。知り合いのフランス人研究者がシェアしてくれた、America 2026というプロジェクトを紹介します。アメリカのOmohundro InstituteやAmerican Philosophical Societyとも提携しつつ、フランスを中心に西ヨーロッパの研究者たちが共同でシンポジウムなどを組織しているようです。これまでのシンポジウムも、アメリカ革命の史学史や記憶をめぐるものやアメリカとモンテスキューの関係についてなど、興味深いものばかりです。Alan Taylorをはじめとして、登壇者も豪華。日本でも何か形に残るプロジェクトを出来ればよいと思うのですが。(言ってるだけではなくて、お前がやれって言われそうですね。笑)(鰐淵)

2022年7月19日火曜日

クロノン『変貌する大地:インディアンと植民者の環境史』


Twitterでどなたかがアップロードしていたウィリアム・クロノンの名著の表紙が素晴らしい。芸術的かつ的確な表現方法に感激します。この絵は入植者を描かずにイギリス人入植者の設置した柵を描き、かつ手前の元来のニューイングランド(雪で表象)の自然と対比することで「変貌する大地」を表現しているわけです。この本もありがたいことに翻訳されています。

変貌する大地

クロスビー、マクニールも翻訳されており、環境史の基本文献は和書でかなり読めます。

クロノンが描いた先住民の世界の変容を北アメリカの大陸大で描いているのが現在のこの分野の状況と言えるでしょうか。ただクロノンに比べて、現在では、先住民が主体的にヨーロッパ産物資を受容し、サバイバルを図るなかで北アメリカの環境の変容に一定の寄与をしたという歴史像へと変わって来ています。そうした研究の翻訳も欲しいところ。

2022年7月15日金曜日

アイラ・バーリン(落合明子/白川恵子訳)『アメリカの奴隷解放と黒人:百年越しの闘争史』(明石書店、2022年)

 今年出版された初期アメリカの和書において特筆すべきは、バーリンの翻訳『アメリカの奴隷解放と黒人』ではないでしょうか。残念ながらバーリンが2018年に死去したために最後の著作となってしまいましたが、2015年の出版からわずかな期間で読めるという幸運に恵まれたことは、訳者の方々には感謝の念しかありません。

バーリンの研究は、主として奴隷制とそこで生きる黒人の主体的生(とその多様性)を扱ってきましたが(和訳『アメリカの奴隷制と黒人』など。これも名著です)、本書は、奴隷解放の歴史を扱っています。訳者の解説でも書かれているように、本書は実証的な事例研究というよりも、従来の研究を総合した概説です。ところがそこはバーリンで、いわゆる「奴隷主国家」論はもちろんのこと、アラン・テイラーの2013年の The Internal Enemyやフォーナーの2015年のGateway to Freedomなど近年の研究成果もふんだんに取り入れており、最新の黒人奴隷制史、さらにはアンテベラム論に触れることができる点が本書のメリットでしょう。
奴隷解放の歴史像に関する本書の枠組みもバーリン独特であり、その中で個々の新しい事実が生き生きとした意味を持ってきます。すなわち奴隷制廃止は南北戦争とリンカーンの奴隷制廃止という政策で実現したのではなく、黒人、白人の民衆レベルでのアクターが1世紀以上にもわたって、局地的に実践した、数多の運動の結果であるというものです。むろん奴隷制反対に対する奴隷主や北部白人による反発も大きく、本書ではその生々しい様も描かれます(1810年代末にフィラデルフィアで自由黒人の誘拐が頻発していて当局も噛んでいたことなど驚きます)。それゆえに各地の黒人は、請願をし、裁判をし、自分たちを見下す白人の解放論者(しばしば奴隷を所有しました)に協力を依頼し、といった地道な活動を日々行っていました。解放に向かう足取りが鈍い一方で奴隷制度は拡大し、読んでいても、本当に奴隷制が終わるのか心配になってきます。ともあれ個々の反奴隷制アクターと奴隷維持勢力との局地戦と部分的勝利の積み重ねの結果として、奴隷解放は起こったというわけです。なるほど、こうした考え方を取れば、自分がやっている一つ一つの事象にも意味があるのかと勇気ももらえる書物です。
訳者の落合先生が後書きで近年の奴隷解放の研究史も書いていて大変助かりますが、ここでも話はどんどん進んでいるようで困ります。本書は次の研究に向けての大きな地ならしとでも言えるでしょうか。
(森)


2022年7月9日土曜日

独立革命と暴力について

 今年はなかなか物騒な事態が起きますが、少し前から、初期アメリカ史でも政治と暴力がテーマとして取り上げられてきてることも事実です。独立革命・戦争についてもトランプ政権の成立前のAmerican Revolution Reborn(2013)の段階でかなりこの点は話題になっていたので、一過性の現象ではない気がします。私が知る限りでも、次のような本も出ています。

Scars of Independence:America's Violent Birth

Between Sovereignty And Anarchy The Politics of Violence in the American Revolutionary Era

前者はこれでもかと革命時の暴力を生々しく描いていて、読んでいて辛くなります(タールフェザーは全身火傷になると初めて知りました)。後者は特に暴力と革命という主題から史学史的な批判を行い、「フランス革命のように」民衆の実力行使が革命の展開において大きな力を持ったという議論を行います(具体的には宗教の暴力や動員、植民地政府の崩壊といった主題)。先住民との融和を図るイギリス政府・植民地政府に入植者が不信を抱き、暴力で政府を崩壊させていったとするグリフィンの議論が典型でしょう。こうした革命論はなかなか教科書的な公的物語になるのは難しいでしょうが、ヴァジニアのポウハタン戦争以後の植民地時代史を前提に、後のアンテベラム期の激しい民衆暴動を思えば、さもありなんという気もします。この点で時代をつなぐための革命に関する良書は(常に戦っている歴史家!)ウッディ・ホルトンが憲法体制の成立と民衆暴力を扱ったUnruly Americansでしょうか(この本はすごい面白いです)。

https://us.macmillan.com/books/9780809016433/unrulyamericansandtheoriginsoftheconstitution

Unruly Americans and the Origins of the Constitution

(森)

2022年7月3日日曜日

先住民イロコイ(オノンダガ)への領土返却のニュース

 先週末に先住民研究者界隈を賑わせたのは、イロコイ六部族連合の一つオノンダガに元々の領土の一部が返却されるというニュースでした。以下のCNNのニュースでも報じられているように、1000エーカーの土地が戻されますが、これは内務省によれば「国家が先住民に土地を返却した最大のもの」になるとのこと。オノンダガネイションも声明を出しています。

CNNの記事:歴史的合意でオノンダガが1000エーカーのNYの森林地を回復

https://www.onondaganation.org/uncategorized/2022/land_back_1023_acres/


この土地は電子機器製品製造会社のハネウェルが所有していましたが、河川と湖の工業汚染を引き起こしました。ハネウェルに対し合衆国魚類野生生物局とNY州環境保護局は汚染除去と現状復帰を求めます。その交渉の結果、元来の所有者であったオノンダガに返却することになったわけです。CNNの記事では書いていませんが、オノンダガの声明では、当局が部族の意見を聞いたとあり、オノンダガも何らかの形で交渉に加わっていた可能性は高いと言えるでしょう。今回の決定では、新しく環境保護の主体として先住民を位置付けています。

イロコイ部族連合が領土を失うのは、本日が記念日であるアメリカ独立を契機としています。イギリス領であった時代は、北米におけるイギリス帝国の最大のパートナーとして、収奪の矛先が向けられることは僅かでした(その代わりイロコイは他の部族の土地を大規模に売ります)。1783年のアメリカ独立後、州の負債を償却し、経済を繁栄させるためにNY州政府、とりわけ知事のクリントンが目を向けたのが州の西北部の大半を占めるイロコイ領でした。実はNYは開拓地としては規模の小さな植民地で(人口は独立時に6番目)、クリントンはイロコイの土地に自営農民を入植させ、開拓地と人口の増加を目指したのです。イロコイは、独立戦争で多くがイギリス側についたために弱体化しており、「賠償」を求める州の圧力には弱い立場でした。さらに州は連合の各部族、さらに部族内の弱い立場の指導者と交渉し、次々に大規模に土地を買収します(1785年の条約だけで46万エーカー)。連合会議はこうしたNYのやり方に批判的でしたが、周知の通り権限がほとんどなく指を咥えて眺めるしかありませんでした。すでに1790年にはイロコイ部族連合のほとんどの土地はNY州へと割譲されました。

憲法制定後の1790年に制定された「先住民通商交易法」は、先住民との土地取引を連邦政府のみに制限しました。しかし連邦政府が主に法規制の対象としたのは、売却して連邦政府に収益がもたらされ、かつ外国の介入が不安視される北西部と南西部の領土(特にイギリス割譲地)であり、NY州内のイロコイ領には介入を控えます。こうしてさらに買収が進み、1800年になるまでにはイロコイ領に残った土地は、独立戦争前のわずか4%にすぎませんでした。



この時イロコイが失った領土の規模に比べれば、今回の返却は雀の涙にすらならない規模です。ただ歴史は一方向にのみ進むのではなく、環境保護のような新たな価値意識の台頭やアクターの活動が功を奏すれば、異なる方向もあり得ることを示しているのかもしれません。

以上のイロコイとNYの関係史については、アラン・テイラーの名著The Divided Groundが詳しく論じていますのでご参照ください。(森)

https://www.penguinrandomhouse.com/books/176725/the-divided-ground-by-alan-taylor/

2022年6月30日木曜日

最高裁判決と文明化五部族

 ここ一週間でアメリカの最高裁判決が物議をかもしています。あまり一般メディアに出ていませんが、昨日大きな判断が下されています。先住民の国家内(保留地内)で非先住民が先住民に犯罪行為を行った場合、州に司法権があるとするもので、先住民諸部族国家は自治権の侵害に当たるとして、大きく反発しています。ここのところ先住民の自治権が実質的に縮小の方向に向かう(連邦と州の権限拡大)方向にあると言われていますが、それを証明するかのような判断で、先住民諸部族もすぐに反発のステートメントを出しています(HPを見るとわかるように、諸部族は自らを主権sovereignと呼んでいます。これは先住民部族国家が州とは異なる法を持つ根拠であり、カジノを経営できる法的基盤でもあります)。

興味深いのは、チェロキー、チョクトー、チカソー、セミノール、マスコギー(かつてのクリーク)の、いわゆる「文明化五部族」が連名で批判の声明を出している点です。19世紀初頭の南部の領土拡大を生き延びるため、この5部族は農耕や憲法体制の採用など「文明化」の道を選択し、こう呼ばれました(黒人奴隷制も導入しました)。1830年代以後には強制移住でオクラホマに追いやられますが、その後も部族国家を維持し続けます。いつごろから「文明化五部族」として政治的な立場を表明し始めたのかは不明ですが、次の選挙でトランプ派のオクラホマ州上院議員候補を批判するなど、5部族はここのところ積極的に協調して政治的立場を表明しています。「文明化五部族」と言いながらも、当時は強制移住には協力して対抗できず、また部族内部でも対立が繰り返されました。時代をこえて新しい連携が生まれてくるのか注目です。 (森)



2022年6月29日水曜日

西部から見た独立革命(来年のOAHパネル)

OAHの年次大会では初期アメリカは少ないですが、来年のOAH年次大会のセッションでこのようなパネルが開催されるようです。

Title

"Human Events:" Seeing American Revolutions from the West

Abstract

This roundtable brings together colleagues from fields including history, archaeology,museum curation and theater, representing the Autry Museum of the American West and theUSC-Huntington Early Modern Studies Institute. We are currently collaborating on an initiativeto consider the 250th anniversary of the Declaration of Independence in light of a much longer, multidirectional timeline, taking a distinctive and potentially disruptive viewpoint from Los Angeles and the southwest. The initiative will encompass the opening of a new coregallery at the Autry, a series of public and scholarly programs and symposia organized chiefly by EMSI, and an array of publications. The session may be held at the Autry Museum of the American West.

Participants

Dr. Virginia J. Scharff

Professor Carolyn E Brucken

Professor Stephen A. Aron

Dr. Alice Lucile Baumgartner

Professor William Francis Deverell

Professor Steven William Hackel UC Riverside

Ms. Karimah Richardson

Ms. Martinez Nicole

2022年6月26日日曜日

ヴァジニア植民地の史料

 公文書の一次史料という点で最も充実しているのはヴァジニアではないかと思います。エドモンド・モーガン、キャサリン・M・ブラウンをはじめ、これまで多くの植民地時代を代表する研究がヴァジニアを対象に行われてきたのも史料の豊富さが裏付けとなっているでしょう。

ヴァジニア会社の史料も豊富ですが、王領化されて以後の行政・議会文書もしっかりしています。鰐淵さんが挙げたように法律も活字化されています。中央政府の史料は、参事会と代議会の史料があり、19世紀に活字化されましたが、現在ではいずれもオンライン化されています。

参事会史料:行政

https://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupid?key=olbp65003

参事会史料:立法

https://archive.org/search.php?query=legislative%20journal%20council%20of%20colonial%20Virginia

代議会史料

https://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/browse?type=title&index=802989&key=journals%20of%20the%20house%20of%20burgesses%20of%20virginia%201619%201776&c=x

このうち、代議会はマサチューセッツと同じく項目だけの簡素な記述で情報量は決して多くないです。他方で充実しているのは参事会史料の行政文書。これはすごいです。参事会は行政機構だっただけでなく、土地のグラントなど総督が握る権限についても参事会に諮問せねばならないので、結果として防衛から土地配分までほとんどの中央行政の情報が参事会に集まります。

またヴァジニアの場合、私が知っているだけでも以下のように、請願や地方行政などの情報を集めた史料集がいくつも刊行されており、これもヴァジニアの研究に適したところです。

Historical Collection of Virginia

もう一つ言えば、ヴァジニアの有益な点は郡の史料も残存していて、かつ編纂されており、社会史・地方史レベルのミクロな研究が可能なことです。他の植民地では地方史料はどのような形で保存されているのかわかりませんが、ヴァジニアでは州立図書館に集中的に所蔵されていて、日本の大学図書館を通じて貸借もできます。私はかつてサリー郡のマイクロフィルムの史料を借りました(Surry County, Virginia, Deeds, Wills, Etc., Virginia State Library)。こうした地方史料はしばしば活字にもなっており、貴重な裁判史料にアクセスすることも可能です。

アコマック郡(Family Searchでは閲覧可能)

https://books.google.co.jp/books/about/County_Court_Records_of_Accomack_Northam.html?id=xvNOAQAAIAAJ&redir_esc=y

その他の郡についてもVirginia Colonial Abstract としてかなりあります。芳賀さんがノーザンバーランド郡の裁判史料と行政文書を使って奉公人の解放裁判に関する論文を書かれましたが、日本でもミクロな研究が可能なのはこうした状況によるでしょう。まさにヴァジニアは宝庫。

https://discover.hsp.org/Search/Results?lookfor=%22Virginia+colonial+abstracts+%3B%22&type=Series



2022年6月22日水曜日

植民地時代の法令集 Statutes at Large

森先生がニューヨークやマサチューセッツの政府史料のソースを挙げているので、補足として植民地時代の法令集(Statutes at Large)について紹介したいと思います。Statutes at Largeは法律の全文が各年の会期毎にまとめられたもので、議会や参事会で議論された法律の条文を確認することができます。例えば、有名なヴァジニアの1661年のSlave codesのような、奴隷制に関する法律もここに含まれます。自分のフィールドであるペンシルヴァニアのものはありがたいことに最近オンライン化され、植民地時代の全セッションをブラウズすることもサーチすることもできるようになりました。

https://www.palrb.gov/Preservation

ちょっと調べてみると、マサチューセッツは1692年以降のものが整理されており、オンライン化されています。それ以前の特許状など関連するものは下のリンクから。

https://www.mass.gov/service-details/massachusetts-acts-and-resolves

https://www.mass.gov/info-details/massachusetts-historical-legal-documents-and-laws

ヴァジニアもオンライン化されています。Google Books等でダウンロードもできるようです。

http://www.vagenweb.org/hening/

それ以外の植民地も調べたい人は、ちょっと見にくいですが、以下のサイトから始めるとよいと思います。

https://libguides.bgsu.edu/c.php?g=227233&p=1506227

(鰐淵)

2022年6月18日土曜日

植民地時代ニューヨークの史料

 イギリス領植民地の公文書は、各植民地で編纂の仕方も残存状況も別々です。研究を進める際にはそれぞれの状況を知っておくと便利です。例えば、マサチューセッツの場合、上記のように代議会史料は活字版がありますが、参事会はなく、Mass Archivesの手稿文書に当たらなければなりません。また代議会も審議項目が掲載されているだけなので、議論はほとんどわかりません(この植民地は牧師の説教はやたらに残っているのに…)。こうした状況が植民地でバラバラなのです。メリーランドやニューハンプシャーのように多様な行政文書がごったにまとめられている場合もありますし、ペンシルヴァニアのように整然と参事会と代議会をシリーズに分けて編纂している場合もあります。ここではニューヨークの公文書についてメモしておきます。

ニューヨークの公文書は基本的にO'Callaghanを中心に19世紀に編纂された2系統の史料に分かれます。一つはDocuments Relative to the Colonial History of the State of New-Yorkで、主に本国政府との植民地政府の往復書簡です。ニューヨークに関わるフランス文書やオランダ文書も翻訳されて掲載されているのも特徴です。








現在はオンラインで閲覧−ダウンロード可能です。

https://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupid?key=olbp69764

もう一方は、Documentary History of the State of New Yorkのシリーズで、こちらの内容はほとんど統一性がありません。一巻だけとっても、先住民、遠征報告、地域の調査など様々です。ただこちらは上記に比べても貴重な文書が収録されているので(先住民関連も多いです)、探せば役に立つものがあるかもしれません。こちらもオンラインで閲覧−ダウンロード可能です(Vol. 1のみ載せます)。

https://archive.org/search.php?query=Documentary%20history%20%20colonial%20new%20york

ニューヨークの公文書の問題は、議会史料が乏しいことです。参事会議事録は活字化され、オンライン化もされていますが、内容がすごく薄いのが特徴で、Documents Relative to the Colonial History of the State of New-Yorkを見れば内容はわかります(NYは総督が参事会を選任し、総督の権限が強かったことも理由でしょう)。https://archive.org/details/journaloflegisla02newy

代議会については活字化もされていません。ただし同時代に印刷されたものがまとめられてECCOから出版されています。これは財務報告も含んだかなりしっかりした史料なので、有用です。興味ある人は言ってください。(森)





2022年6月15日水曜日

University of North Carolina Pressのセール

 University of North Carolina Pressが創業100周年ということで大型セールをやっています(https://uncpress.org/anniversary-sale/)。全商品4割引で、アメリカ国内は無料配送というなかなかのセール。とはいえアメリカ国外は送料が最初10ドル、以下一冊ごとに6ドル以上かかるし、なおかつ円安なので、結局、割引分は相殺でしょう。Amazonの洋書も狂ったように送料が上がっていて、苦しいです。まずは初期アメリカ分野のカタログを見て楽しむのがいいかも。知らない本が出まくっていてキリがない。

https://uncpress.org/search-results/?category=UNCCREEAH



これはペンシルヴァニアの先住民外交に関する大学生向けのアクティブラーニングの教科書のよう。七年戦争時の先住民との戦争をペンシルヴァニアがどのように外交で終息させたかを会合や条約など複数の史料を読みながら再現する、と。複数の言語、文化、感情、利害が絡む先住民外交史上に残る名場面。面白い授業になりそう。初期アメリカ関係でシリーズ化されているみたいです。

2022年6月13日月曜日

Creek Internationalism in an Age of Revolution, 1763-1818

来月出る本。クリークがヨーロッパ外交を展開し、国際承認を受けて独立国の地位を得て、領土の保持を図ろうとしていた、と。うーむ興味深い。先日の初期アメリカ分科会の内容の前史ですね。

https://www.nebraskapress.unl.edu/nebraska/9781496215185/

Creek Internationalism in an Age of Revolution, 1763–1818


文書館予約はお早めに

この夏は調査だという方もおられるでしょうか。

お目当ての文書館の予約は早めが良いです。今はまだコロナ対応で席数が限られているところがあります、要確認。

ニューヨークですと、NY Historical SocietyとコロンビアのRare Book Manuscript Libraryは混み合っています。 調査が近づいてからあわてるのは愚かな私だけかもしれませんが、ご参考までに。(松原)

2022年6月12日日曜日

Early American Indian documents : treaties and laws, 1607-1789

 植民地時代−革命期の先住民−ヨーロッパ人外交に関して、非常に有用な史料集はEarly American Indian documents : treaties and laws, 1607-1789です。以下のように植民地ごとに先住民との条約が収録されています。それだけでなく、この史料集が充実しているのは、複数の史料集から条約に関連した史料が転載されている点です。例えば下の図は、アベナキとイギリスの条約会合に同席していたフランス人宣教師がフランスに報告しているもので、Jesuit Relatiosという有名なイエズス会史料集からの転載です。イギリス側史料ではアベナキは素直に従っているのに対して、ここではアベナキがイギリス側に「(自分達の意志を認めないなら)ここから出ていけ」と言ったと書かれています。したがって、条約成立の経緯や複数の見方を知ることができます。同時にこうした関連史料についても編者が解説している点が有用性の高さの一つです。

ただし、さほど出版が古くないにも関わらず、絶版になってしまい、日本国内の所蔵もごく一部です。幸運なことに、Internet Archiveで公開しています(ただし、登録して貸し出しをせねば見られません)。興味ある方は是非どうぞ。

https://archive.org/details/earlyamericanind0005unse

Vol 1: Pennsylvania and Delaware treaties, 1629-1737 edited by Donald H Kent --
Vol 2: Pennsylvania treaties, 1737-1756 edited by Donald H Kent --
Vol 4: Virginia treaties, 1607-1722 edited by W Stitt Robinson --
Vol 5: Virginia Treaties, 1723-1775 edited by W Stitt Robinson --
Vol 6: Maryland Treaties, 1632-1775 edited by W Stitt Robinson --
Vol 7: New York and New Jersey Treaties, 1609-1682 edited by Barbara Graymont --
Vol. 8: New York and New Jersey treaties, 1683-1713 edited by Barbara Graymont --
Vol. 9: New York and New Jersey treaties, 1714-1753 edited by Barbara Graymont --
Vol. 10: New York and New Jersey treaties, 1754-1775 edited by Barbara Graymont --
Vol. 11: Georgia Treaties 1733-1763 edited by John T. Juricek --
Vol. 12: Georgia and Florida treaties, 1763-1776 edited by John T. Juricek --
Vol. 13: North and South Carolina treaties, 1654-1756 edited by W. Stitt Robinson --
Vol. 14: North and South Carolina treaties, 1756-1775 edited by W. Stitt Robinson --
Vol. 14: North and South Carolina treaties, 1756-1775 edited by W. Stitt Robinson --
Vol. 15: Virginia and Maryland laws edited by Alden T. Vaughan and Deborah A. Rosen --
Vol. 16: Carolina and Georgia laws edited by Alden T. Vaughan and Deborah A. Rosen --
Vol. 17: New England and Middle Atlantic laws edited by Alden T. Vaughan and Deborah A. Rosen --
Vol. 18: Revolution and confederation edited by Colin G. Calloway --
Vol. 19: New England treaties, Southeast, 1524-1761 edited by Daniel R. Mandell --
Vol. 20: New England treaties, North and West, 1650-1776.

2022年6月10日金曜日

The Writings of James Monroe

Founders Onlineを挙げて下さったので、そのメンバーに入っていないJames Monroeのオンラインで読める史料として、以下、The Writings of James MonroeのURLになります。(HathiTrustにもありますが、そちらは限定公開)

I. 1778-1794
 https://archive.org/details/writingsjamesmo03unkngoog/
II. 1794-1796.
 https://archive.org/details/writingsofjamesm015856mbp/
III. 1796-1802.
 https://archive.org/details/writingsjamesmo09monrgoog/
IV. 1803-1806.
 https://archive.org/details/writingsjamesmo03monrgoog/
V. 1807-1816.
 https://archive.org/details/writingsjamesmo00unkngoog/
VI. 1817-1823.
 https://archive.org/details/writingsjamesmo08monrgoog/
VII. 1824-1831
 https://archive.org/details/writingsjamesmo05monrgoog/

検索するのは簡単なのですが、どのファイルがどの巻かわかりづらいのでリストにしておきます。
2000年代以降にThe Papers of James MonroeシリーズがGreenwood社より刊行されていますが、The Writings of James Monroeとは掲載史料が異なります。
https://academics.umw.edu/jamesmonroepapers/publications/publishedcorrespondence/

(遠藤)

アレクザンダー・ハミルトンの少年時代の足どり

「建国の父たち」の中でも、特に雄弁で活力に満ちていたハミルトンですが、彼が少年時代を過ごした西インド諸島での日々は、ハミルトン自身も口を閉ざしがちで、ネイヴィス島で生まれたらしいということ以外は、はっきりとしたことは近年まで分からないことが多かったのです。

彼の少年時代の記録が意外(?)なところから不完全ながら辿れるようになりました。

ハーグのDutch National Archivesに少年時代の彼の家族の納税記録が発見され、それをつなぎ合わせていくと、St. Kitts、St.Eustatius、St.Croixなど西インド諸島の島々でのハミルトンの足どり、一緒に過ごしていた家族の諸事情(ハミルトンの伝記で欠けていたピース)が埋まり始めました。

オランダでのアーカイブス・ワークの成果をまとめたものとして手に入りやすいのは、下記の文献です。

Michael Newton, Discovering Hamilton: New Discoveries in the Lives of Alexander Hamilton, His Family, Friends, and Colleagues From Various Archives Around the World (Phoenix: Eleftheria Publishing, 2019)

また、本研究に触発された論文としては下記があります。入手しやすいように書籍に収録されたものを紹介します。

Ruud Stelten and Alexander Hinton,  “Alexander Hamilton's Missing Yearns: New Insights into the Little Lion's Caribbean Childhood,” Don N. Hgist, ed., Journal of The American Revolution: Annual Volume 2021 (Yardley, Penn.: Westholm Publishing, LLC, 2021), 1-10.

これらの研究には、単に少年時代のハミルトンの足取りにより接近できるという以上の示唆があります。それは、これまで「建国の父たち」の多くがアメリカ大陸に根を張っていた名望家たちだったのに対して、ハミルトンは「境界域の人」だったという認識が改まるところにあるように思われます。西インド諸島の島々は、環大西洋世界における国際政治の最前線であり、文化・思想の先端であったということです。近年の初期アメリカ研究の潮流から、「建国の父たち」を再検討するのは可能であるし、より豊かな視野を与えてくれるように考えます。(石川)




Founders Online

普段の研究で重宝していたのが、Yale University Pressがオープンアクセス化していたThe Papers of Benjamin Franklinのオンライン版(https://franklinpapers.yale.edu)ですが、現在はNational Archives管轄下のこちらにいつの間にか移行していたようです。

https://founders.archives.gov

こちらはすごい!規模も質も大幅に向上しているようです。まず、フランクリンだけではなく、ジョージ・ワシントン、ジョン・アダムズ、トマス・ジェファソン、アレグザンダー・ハミルトン、ジョン・ジェイ、ジェイムズ・マディソンの7名の建国の父の、現在最も信頼できる全集や著作集がクロス検索できるようになっています。Franklin Papersについては、以前のオンライン版では校訂注が見られなかったのですが、Founders Online版では見られるようになっています。わざわざ紙版の全集に当たる必要がなくなってしまった。。。

初期アメリカ史は森先生が紹介している州のアーカイブスも含めて、オープンアクセスのアーカイブスがどんどん増えている(かつ内容もどんどんアップデートされる)ので、こういった場でちょこちょこと気づいたものを紹介できると良いですね。

投稿の練習も兼ねての初投稿でした。(鰐淵)

2022年6月9日木曜日

McNeil Center seminars 研究会案内2

言わずと知れたペンシルヴェニア大McNeil CenterのFriday seminars。当分ハイブリッドでやってくれそうですが、時差がちょっときついです。

それでもこのMcNeil Centerはすばらしい環境でした。ポスドク・フェローを10人以上かかえて、いつも活気のある議論になります。院生さん向けのブラウンバッグ・セミナーもあり、Zoomが普及した今ならこれも真似したいと思いました。(松原)

Brett Rushfordについて

私がTwitterでフォロー中の Brett Rushfordは最近の初期アメリカ史のリーディングヒストリアンの一人で、そして近年の初期アメリカ史の傾向の象徴的存在です。 フランス領カナダにおける奴隷制を介した先住民とフランス人の関係史で非常に優れた研究をして脚光を浴びましたがhttps://www.goodreads.com/book/show/13790947-bonds-of-alliance、最近はカリブの島マルティニクの逃亡奴隷と奴隷反乱の研究をやってます。https://oieahc-cf.wm.edu/wmq/Jan19/abstracts.html

実際、こうした研究者が増えていて、例えば、独立革命期ヴァジニアの軍事動員について極めて優れた研究をしたMichael Macdonnell(珍しくニュージーランドの人)は、最近は中西部の先住民について、これまた新しいタイプの研究をやって注目を浴びていますhttps://www.michaelamcdonnell.org/masters-of-empire

先住民−ヨーロッパ人関係史の大家Eric Hinderakerも最近は大西洋史から見るボストン虐殺の研究をしてるし。こうしたVastな初期アメリカ史に多方面から切り込む人が目立ちます(かつてはニューイングランドとヴァジニアの両方という研究者が多かったです。ベイリンもモーガンもブリーンも)。面白い傾向だけど、もうフォローするのすら大変。イギリス人の植民地の発展だけやっていた昔を懐かしむ人がいるのもわかる気がします(それを主張すると叩かれるし…)(森)


2022年6月7日火曜日

研究会案内1

The Seminar on Early American History and Culture@Columbia University

コロンビアのHannah FarberとCUNYのJohn Blantonとが世話人の月例研究会。

コロナ禍を経て、いまはハイブリッド型で運営されています。冬時間になれば日本からも朝7時台に参加可能。小さな研究会でじっくり話ができます。

(以上、投稿の練習を兼ねて。松原)

初期アメリカ史関係の雑誌リンク

 初期アメリカ史関係の雑誌リンクをまとめておきます(最近増えた気がします。追いかけるのが大変・・・)。リンクにも載せています。しかし国内に所蔵大学がない雑誌も多い現状はどうしたものか。

Journal of Early American History

https://brill.com/view/journals/jeah/jeah-overview.xml

William and Mary Quarterly

https://oieahc.wm.edu/publications/wmq/

Early American Studies

https://eas.pennpress.org/home/

Journal of Early Republic

https://jer.pennpress.org/home/


2022年6月6日月曜日

17-18世紀のボストン市の史料

 オープンリソースのボストン史の史料をまとめています。議事録なので情報は必ずしも多くないですが、タウンミーティング議事、人事まで幅広く記録されています。課税者名簿、救貧行政、防衛、治安などの情報も多くて独立前の都市社会史の研究に使えると思います。https://fukuoka-u.box.com/s/zxecvsviwjz465qizy68pbhah3deodi7

西京高校授業:海賊と植民地アメリカ

 1月に山口県立西京高校の歴史の先生のオンライン授業でコメントをした際のパワポです。レディカーは海賊の出自や経験を特定の階層に求めるけど、「大西洋の向こう」は、海賊/民間船の私掠、兵士/民間人、合法/非合法、被害者/加害者といった境界線はしばしば揺らぐ場所ではないかという内容。

https://docs.google.com/presentation/d/1zpthDqDxnJt6kD-eOclkFOKe3lcp0vcx/edit?usp=sharing&ouid=113242651500869917444&rtpof=true&sd=true

これは戦時中マサチューセッツは民間人なら誰でもインディアンを殺して報奨金を出すという法律。民間人も兵士=殺人者になることを許可されている。だからこそハナ・ダンストンのような女性のインディアン虐殺者が英雄になるわけで。





Mori

昨年の非国家地域の外交研究会報告レジュメ(「「同盟」と「臣従」のあいだ」)

昨年、非国家地域の外交研究会で行った森の報告レジュメと資料です。オンラインだったので反応がよくわからないまま・・・。

https://docs.google.com/document/d/14_Y6bB9P8ug3fvuC6wd9sU2rVHBQjDoO/edit?usp=sharing&ouid=113242651500869917444&rtpof=true&sd=true

https://docs.google.com/presentation/d/1Fgf6KRddj_MDCErw30pxY_pIw2-h1mtX/edit?usp=sharing&ouid=113242651500869917444&rtpof=true&sd=true

Journal of House of Representatives

 マサチューセッツは代議会の議事録は活字化されていましたが、現在は絶版です。幸い、以下のサイトで閲覧ができます(ダウンロードは大きく制限されています)。ただし1715年以前は火災などで喪失してしまっています(一定期間までは下記のCSPCに掲載されています)。とはいえ、マサチューセッツの政治・行政の基礎史料であることは間違いありません。

https://catalog.hathitrust.org/Record/000532438

Massachusetts Archives Collection

 マサチューセッツ州立文書館に所蔵されている植民地時代−革命期の政府史料は数年前から全面的にデータベース化されています。以前は現地に行かなければならなかった史料に簡単にアクセスできるようになりました(数ヶ月間、写真を撮ってデータを集めたあの苦労はなんだったのか・・)。総督の布告、参事会議事録、裁判、政府に集まった情報、軍事遠征の報告などなど、無数の情報があり、宝の山です。リンクをたどると他の史料も豊富に掲載されています。

▷1699年のインディアン蜂起陰謀の情報を密告する総督宛の手紙


Family Serchの登録が必要。

https://www.familysearch.org/en/wiki/Massachusetts_Archives_Collection

Calendar of State Papers

 オープンソースの史料Calendar of State Papersのデータをまとめています。1740年までの植民地-本国間で交わされた公式文書のうち、British LibraryのColonial Office:America and West Indiesに収められた史料のダイジェストです。

https://fukuoka-u.box.com/s/j41yughibxzzp8yfcfigkv925d612gp8

2022年6月5日日曜日

開設について

初期アメリカ史研究者のためのブログを開設しました。研究者の皆さんに投稿してもらい、相互に情報共有していきたいと思います。