2022年7月9日土曜日

独立革命と暴力について

 今年はなかなか物騒な事態が起きますが、少し前から、初期アメリカ史でも政治と暴力がテーマとして取り上げられてきてることも事実です。独立革命・戦争についてもトランプ政権の成立前のAmerican Revolution Reborn(2013)の段階でかなりこの点は話題になっていたので、一過性の現象ではない気がします。私が知る限りでも、次のような本も出ています。

Scars of Independence:America's Violent Birth

Between Sovereignty And Anarchy The Politics of Violence in the American Revolutionary Era

前者はこれでもかと革命時の暴力を生々しく描いていて、読んでいて辛くなります(タールフェザーは全身火傷になると初めて知りました)。後者は特に暴力と革命という主題から史学史的な批判を行い、「フランス革命のように」民衆の実力行使が革命の展開において大きな力を持ったという議論を行います(具体的には宗教の暴力や動員、植民地政府の崩壊といった主題)。先住民との融和を図るイギリス政府・植民地政府に入植者が不信を抱き、暴力で政府を崩壊させていったとするグリフィンの議論が典型でしょう。こうした革命論はなかなか教科書的な公的物語になるのは難しいでしょうが、ヴァジニアのポウハタン戦争以後の植民地時代史を前提に、後のアンテベラム期の激しい民衆暴動を思えば、さもありなんという気もします。この点で時代をつなぐための革命に関する良書は(常に戦っている歴史家!)ウッディ・ホルトンが憲法体制の成立と民衆暴力を扱ったUnruly Americansでしょうか(この本はすごい面白いです)。

https://us.macmillan.com/books/9780809016433/unrulyamericansandtheoriginsoftheconstitution

Unruly Americans and the Origins of the Constitution

(森)

5 件のコメント:

  1. 文献情報ありがとうございます。合衆憲法制定者たちがイギリス本国から独立した後、anarchyをいつも問題としていて、具体的にそれの何が危険なのかというとtyrannyの温床だからである、としていますよね。暴力が状態の社会では、人々はまず安全を求めるようになると。そうすると、共和政にしろ民主政にしろ後回しの問題になっちゃうんだと。おっしゃるように一過性のものではなく、21世紀になっても油断すると顔を出す問題だと思いました。

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  2. コメントありがとうございます。
    >合衆憲法制定者たちがイギリス本国から独立した後、anarchyをいつも問題としていて、具体的にそれの何が危険なのかというとtyrannyの温床だからである、としていますよね。
    これはすごく重要ですよね。院生と奴隷制廃止の勉強をしていますが、独立革命を経て、イギリスは自分たちとアメリカの暴力状態をすごく対比するようになります。イギリスに近いフェデラリストは民主暴力を嫌いますが、ジェファソン派の指導者たちはどう考えたのか知りたいです。ぜひ論じてほしいです!!

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  3. 民主暴力→民衆暴力

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  4. Ben Franklin WorldのLiz Covartのツイート
    Current historical work reminds us to consider the violence of colonial America and the American Revolution. As I work on an episode about 1830 in the United States, I wonder when the violence stopped. Although I supposed it hasn’t stopped, just changed.
    https://mobile.twitter.com/lizcovart/status/1549130550488829952

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