2022年6月18日土曜日

植民地時代ニューヨークの史料

 イギリス領植民地の公文書は、各植民地で編纂の仕方も残存状況も別々です。研究を進める際にはそれぞれの状況を知っておくと便利です。例えば、マサチューセッツの場合、上記のように代議会史料は活字版がありますが、参事会はなく、Mass Archivesの手稿文書に当たらなければなりません。また代議会も審議項目が掲載されているだけなので、議論はほとんどわかりません(この植民地は牧師の説教はやたらに残っているのに…)。こうした状況が植民地でバラバラなのです。メリーランドやニューハンプシャーのように多様な行政文書がごったにまとめられている場合もありますし、ペンシルヴァニアのように整然と参事会と代議会をシリーズに分けて編纂している場合もあります。ここではニューヨークの公文書についてメモしておきます。

ニューヨークの公文書は基本的にO'Callaghanを中心に19世紀に編纂された2系統の史料に分かれます。一つはDocuments Relative to the Colonial History of the State of New-Yorkで、主に本国政府との植民地政府の往復書簡です。ニューヨークに関わるフランス文書やオランダ文書も翻訳されて掲載されているのも特徴です。








現在はオンラインで閲覧−ダウンロード可能です。

https://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupid?key=olbp69764

もう一方は、Documentary History of the State of New Yorkのシリーズで、こちらの内容はほとんど統一性がありません。一巻だけとっても、先住民、遠征報告、地域の調査など様々です。ただこちらは上記に比べても貴重な文書が収録されているので(先住民関連も多いです)、探せば役に立つものがあるかもしれません。こちらもオンラインで閲覧−ダウンロード可能です(Vol. 1のみ載せます)。

https://archive.org/search.php?query=Documentary%20history%20%20colonial%20new%20york

ニューヨークの公文書の問題は、議会史料が乏しいことです。参事会議事録は活字化され、オンライン化もされていますが、内容がすごく薄いのが特徴で、Documents Relative to the Colonial History of the State of New-Yorkを見れば内容はわかります(NYは総督が参事会を選任し、総督の権限が強かったことも理由でしょう)。https://archive.org/details/journaloflegisla02newy

代議会については活字化もされていません。ただし同時代に印刷されたものがまとめられてECCOから出版されています。これは財務報告も含んだかなりしっかりした史料なので、有用です。興味ある人は言ってください。(森)





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