2022年6月26日日曜日

ヴァジニア植民地の史料

 公文書の一次史料という点で最も充実しているのはヴァジニアではないかと思います。エドモンド・モーガン、キャサリン・M・ブラウンをはじめ、これまで多くの植民地時代を代表する研究がヴァジニアを対象に行われてきたのも史料の豊富さが裏付けとなっているでしょう。

ヴァジニア会社の史料も豊富ですが、王領化されて以後の行政・議会文書もしっかりしています。鰐淵さんが挙げたように法律も活字化されています。中央政府の史料は、参事会と代議会の史料があり、19世紀に活字化されましたが、現在ではいずれもオンライン化されています。

参事会史料:行政

https://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupid?key=olbp65003

参事会史料:立法

https://archive.org/search.php?query=legislative%20journal%20council%20of%20colonial%20Virginia

代議会史料

https://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/browse?type=title&index=802989&key=journals%20of%20the%20house%20of%20burgesses%20of%20virginia%201619%201776&c=x

このうち、代議会はマサチューセッツと同じく項目だけの簡素な記述で情報量は決して多くないです。他方で充実しているのは参事会史料の行政文書。これはすごいです。参事会は行政機構だっただけでなく、土地のグラントなど総督が握る権限についても参事会に諮問せねばならないので、結果として防衛から土地配分までほとんどの中央行政の情報が参事会に集まります。

またヴァジニアの場合、私が知っているだけでも以下のように、請願や地方行政などの情報を集めた史料集がいくつも刊行されており、これもヴァジニアの研究に適したところです。

Historical Collection of Virginia

もう一つ言えば、ヴァジニアの有益な点は郡の史料も残存していて、かつ編纂されており、社会史・地方史レベルのミクロな研究が可能なことです。他の植民地では地方史料はどのような形で保存されているのかわかりませんが、ヴァジニアでは州立図書館に集中的に所蔵されていて、日本の大学図書館を通じて貸借もできます。私はかつてサリー郡のマイクロフィルムの史料を借りました(Surry County, Virginia, Deeds, Wills, Etc., Virginia State Library)。こうした地方史料はしばしば活字にもなっており、貴重な裁判史料にアクセスすることも可能です。

アコマック郡(Family Searchでは閲覧可能)

https://books.google.co.jp/books/about/County_Court_Records_of_Accomack_Northam.html?id=xvNOAQAAIAAJ&redir_esc=y

その他の郡についてもVirginia Colonial Abstract としてかなりあります。芳賀さんがノーザンバーランド郡の裁判史料と行政文書を使って奉公人の解放裁判に関する論文を書かれましたが、日本でもミクロな研究が可能なのはこうした状況によるでしょう。まさにヴァジニアは宝庫。

https://discover.hsp.org/Search/Results?lookfor=%22Virginia+colonial+abstracts+%3B%22&type=Series



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