2022年6月10日金曜日

アレクザンダー・ハミルトンの少年時代の足どり

「建国の父たち」の中でも、特に雄弁で活力に満ちていたハミルトンですが、彼が少年時代を過ごした西インド諸島での日々は、ハミルトン自身も口を閉ざしがちで、ネイヴィス島で生まれたらしいということ以外は、はっきりとしたことは近年まで分からないことが多かったのです。

彼の少年時代の記録が意外(?)なところから不完全ながら辿れるようになりました。

ハーグのDutch National Archivesに少年時代の彼の家族の納税記録が発見され、それをつなぎ合わせていくと、St. Kitts、St.Eustatius、St.Croixなど西インド諸島の島々でのハミルトンの足どり、一緒に過ごしていた家族の諸事情(ハミルトンの伝記で欠けていたピース)が埋まり始めました。

オランダでのアーカイブス・ワークの成果をまとめたものとして手に入りやすいのは、下記の文献です。

Michael Newton, Discovering Hamilton: New Discoveries in the Lives of Alexander Hamilton, His Family, Friends, and Colleagues From Various Archives Around the World (Phoenix: Eleftheria Publishing, 2019)

また、本研究に触発された論文としては下記があります。入手しやすいように書籍に収録されたものを紹介します。

Ruud Stelten and Alexander Hinton,  “Alexander Hamilton's Missing Yearns: New Insights into the Little Lion's Caribbean Childhood,” Don N. Hgist, ed., Journal of The American Revolution: Annual Volume 2021 (Yardley, Penn.: Westholm Publishing, LLC, 2021), 1-10.

これらの研究には、単に少年時代のハミルトンの足取りにより接近できるという以上の示唆があります。それは、これまで「建国の父たち」の多くがアメリカ大陸に根を張っていた名望家たちだったのに対して、ハミルトンは「境界域の人」だったという認識が改まるところにあるように思われます。西インド諸島の島々は、環大西洋世界における国際政治の最前線であり、文化・思想の先端であったということです。近年の初期アメリカ研究の潮流から、「建国の父たち」を再検討するのは可能であるし、より豊かな視野を与えてくれるように考えます。(石川)




4 件のコメント:

  1. ありがとうございます!すごく面白く勉強になります。

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  2. 面白いですね!2番目の論文はオンライン版のJournal of the American Revolutionでも読めるようです。

    https://allthingsliberty.com/2020/10/alexander-hamiltons-missing-years-new-discoveries-and-insights-into-the-little-lions-caribbean-childhood/

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  3. 鰐淵さんありがとうございます!

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  4. 最新の知見をありがとうございます。
    ハミルトンの出自は本当に興味深いですね。
    (監修された日本語字幕版もいつか授業で使いたい…)

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