ここ一週間でアメリカの最高裁判決が物議をかもしています。あまり一般メディアに出ていませんが、昨日大きな判断が下されています。先住民の国家内(保留地内)で非先住民が先住民に犯罪行為を行った場合、州に司法権があるとするもので、先住民諸部族国家は自治権の侵害に当たるとして、大きく反発しています。ここのところ先住民の自治権が実質的に縮小の方向に向かう(連邦と州の権限拡大)方向にあると言われていますが、それを証明するかのような判断で、先住民諸部族もすぐに反発のステートメントを出しています(HPを見るとわかるように、諸部族は自らを主権sovereignと呼んでいます。これは先住民部族国家が州とは異なる法を持つ根拠であり、カジノを経営できる法的基盤でもあります)。
興味深いのは、チェロキー、チョクトー、チカソー、セミノール、マスコギー(かつてのクリーク)の、いわゆる「文明化五部族」が連名で批判の声明を出している点です。19世紀初頭の南部の領土拡大を生き延びるため、この5部族は農耕や憲法体制の採用など「文明化」の道を選択し、こう呼ばれました(黒人奴隷制も導入しました)。1830年代以後には強制移住でオクラホマに追いやられますが、その後も部族国家を維持し続けます。いつごろから「文明化五部族」として政治的な立場を表明し始めたのかは不明ですが、次の選挙でトランプ派のオクラホマ州上院議員候補を批判するなど、5部族はここのところ積極的に協調して政治的立場を表明しています。「文明化五部族」と言いながらも、当時は強制移住には協力して対抗できず、また部族内部でも対立が繰り返されました。時代をこえて新しい連携が生まれてくるのか注目です。 (森)