2022年6月30日木曜日

最高裁判決と文明化五部族

 ここ一週間でアメリカの最高裁判決が物議をかもしています。あまり一般メディアに出ていませんが、昨日大きな判断が下されています。先住民の国家内(保留地内)で非先住民が先住民に犯罪行為を行った場合、州に司法権があるとするもので、先住民諸部族国家は自治権の侵害に当たるとして、大きく反発しています。ここのところ先住民の自治権が実質的に縮小の方向に向かう(連邦と州の権限拡大)方向にあると言われていますが、それを証明するかのような判断で、先住民諸部族もすぐに反発のステートメントを出しています(HPを見るとわかるように、諸部族は自らを主権sovereignと呼んでいます。これは先住民部族国家が州とは異なる法を持つ根拠であり、カジノを経営できる法的基盤でもあります)。

興味深いのは、チェロキー、チョクトー、チカソー、セミノール、マスコギー(かつてのクリーク)の、いわゆる「文明化五部族」が連名で批判の声明を出している点です。19世紀初頭の南部の領土拡大を生き延びるため、この5部族は農耕や憲法体制の採用など「文明化」の道を選択し、こう呼ばれました(黒人奴隷制も導入しました)。1830年代以後には強制移住でオクラホマに追いやられますが、その後も部族国家を維持し続けます。いつごろから「文明化五部族」として政治的な立場を表明し始めたのかは不明ですが、次の選挙でトランプ派のオクラホマ州上院議員候補を批判するなど、5部族はここのところ積極的に協調して政治的立場を表明しています。「文明化五部族」と言いながらも、当時は強制移住には協力して対抗できず、また部族内部でも対立が繰り返されました。時代をこえて新しい連携が生まれてくるのか注目です。 (森)



2022年6月29日水曜日

西部から見た独立革命(来年のOAHパネル)

OAHの年次大会では初期アメリカは少ないですが、来年のOAH年次大会のセッションでこのようなパネルが開催されるようです。

Title

"Human Events:" Seeing American Revolutions from the West

Abstract

This roundtable brings together colleagues from fields including history, archaeology,museum curation and theater, representing the Autry Museum of the American West and theUSC-Huntington Early Modern Studies Institute. We are currently collaborating on an initiativeto consider the 250th anniversary of the Declaration of Independence in light of a much longer, multidirectional timeline, taking a distinctive and potentially disruptive viewpoint from Los Angeles and the southwest. The initiative will encompass the opening of a new coregallery at the Autry, a series of public and scholarly programs and symposia organized chiefly by EMSI, and an array of publications. The session may be held at the Autry Museum of the American West.

Participants

Dr. Virginia J. Scharff

Professor Carolyn E Brucken

Professor Stephen A. Aron

Dr. Alice Lucile Baumgartner

Professor William Francis Deverell

Professor Steven William Hackel UC Riverside

Ms. Karimah Richardson

Ms. Martinez Nicole

2022年6月26日日曜日

ヴァジニア植民地の史料

 公文書の一次史料という点で最も充実しているのはヴァジニアではないかと思います。エドモンド・モーガン、キャサリン・M・ブラウンをはじめ、これまで多くの植民地時代を代表する研究がヴァジニアを対象に行われてきたのも史料の豊富さが裏付けとなっているでしょう。

ヴァジニア会社の史料も豊富ですが、王領化されて以後の行政・議会文書もしっかりしています。鰐淵さんが挙げたように法律も活字化されています。中央政府の史料は、参事会と代議会の史料があり、19世紀に活字化されましたが、現在ではいずれもオンライン化されています。

参事会史料:行政

https://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupid?key=olbp65003

参事会史料:立法

https://archive.org/search.php?query=legislative%20journal%20council%20of%20colonial%20Virginia

代議会史料

https://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/browse?type=title&index=802989&key=journals%20of%20the%20house%20of%20burgesses%20of%20virginia%201619%201776&c=x

このうち、代議会はマサチューセッツと同じく項目だけの簡素な記述で情報量は決して多くないです。他方で充実しているのは参事会史料の行政文書。これはすごいです。参事会は行政機構だっただけでなく、土地のグラントなど総督が握る権限についても参事会に諮問せねばならないので、結果として防衛から土地配分までほとんどの中央行政の情報が参事会に集まります。

またヴァジニアの場合、私が知っているだけでも以下のように、請願や地方行政などの情報を集めた史料集がいくつも刊行されており、これもヴァジニアの研究に適したところです。

Historical Collection of Virginia

もう一つ言えば、ヴァジニアの有益な点は郡の史料も残存していて、かつ編纂されており、社会史・地方史レベルのミクロな研究が可能なことです。他の植民地では地方史料はどのような形で保存されているのかわかりませんが、ヴァジニアでは州立図書館に集中的に所蔵されていて、日本の大学図書館を通じて貸借もできます。私はかつてサリー郡のマイクロフィルムの史料を借りました(Surry County, Virginia, Deeds, Wills, Etc., Virginia State Library)。こうした地方史料はしばしば活字にもなっており、貴重な裁判史料にアクセスすることも可能です。

アコマック郡(Family Searchでは閲覧可能)

https://books.google.co.jp/books/about/County_Court_Records_of_Accomack_Northam.html?id=xvNOAQAAIAAJ&redir_esc=y

その他の郡についてもVirginia Colonial Abstract としてかなりあります。芳賀さんがノーザンバーランド郡の裁判史料と行政文書を使って奉公人の解放裁判に関する論文を書かれましたが、日本でもミクロな研究が可能なのはこうした状況によるでしょう。まさにヴァジニアは宝庫。

https://discover.hsp.org/Search/Results?lookfor=%22Virginia+colonial+abstracts+%3B%22&type=Series



2022年6月22日水曜日

植民地時代の法令集 Statutes at Large

森先生がニューヨークやマサチューセッツの政府史料のソースを挙げているので、補足として植民地時代の法令集(Statutes at Large)について紹介したいと思います。Statutes at Largeは法律の全文が各年の会期毎にまとめられたもので、議会や参事会で議論された法律の条文を確認することができます。例えば、有名なヴァジニアの1661年のSlave codesのような、奴隷制に関する法律もここに含まれます。自分のフィールドであるペンシルヴァニアのものはありがたいことに最近オンライン化され、植民地時代の全セッションをブラウズすることもサーチすることもできるようになりました。

https://www.palrb.gov/Preservation

ちょっと調べてみると、マサチューセッツは1692年以降のものが整理されており、オンライン化されています。それ以前の特許状など関連するものは下のリンクから。

https://www.mass.gov/service-details/massachusetts-acts-and-resolves

https://www.mass.gov/info-details/massachusetts-historical-legal-documents-and-laws

ヴァジニアもオンライン化されています。Google Books等でダウンロードもできるようです。

http://www.vagenweb.org/hening/

それ以外の植民地も調べたい人は、ちょっと見にくいですが、以下のサイトから始めるとよいと思います。

https://libguides.bgsu.edu/c.php?g=227233&p=1506227

(鰐淵)

2022年6月18日土曜日

植民地時代ニューヨークの史料

 イギリス領植民地の公文書は、各植民地で編纂の仕方も残存状況も別々です。研究を進める際にはそれぞれの状況を知っておくと便利です。例えば、マサチューセッツの場合、上記のように代議会史料は活字版がありますが、参事会はなく、Mass Archivesの手稿文書に当たらなければなりません。また代議会も審議項目が掲載されているだけなので、議論はほとんどわかりません(この植民地は牧師の説教はやたらに残っているのに…)。こうした状況が植民地でバラバラなのです。メリーランドやニューハンプシャーのように多様な行政文書がごったにまとめられている場合もありますし、ペンシルヴァニアのように整然と参事会と代議会をシリーズに分けて編纂している場合もあります。ここではニューヨークの公文書についてメモしておきます。

ニューヨークの公文書は基本的にO'Callaghanを中心に19世紀に編纂された2系統の史料に分かれます。一つはDocuments Relative to the Colonial History of the State of New-Yorkで、主に本国政府との植民地政府の往復書簡です。ニューヨークに関わるフランス文書やオランダ文書も翻訳されて掲載されているのも特徴です。








現在はオンラインで閲覧−ダウンロード可能です。

https://onlinebooks.library.upenn.edu/webbin/book/lookupid?key=olbp69764

もう一方は、Documentary History of the State of New Yorkのシリーズで、こちらの内容はほとんど統一性がありません。一巻だけとっても、先住民、遠征報告、地域の調査など様々です。ただこちらは上記に比べても貴重な文書が収録されているので(先住民関連も多いです)、探せば役に立つものがあるかもしれません。こちらもオンラインで閲覧−ダウンロード可能です(Vol. 1のみ載せます)。

https://archive.org/search.php?query=Documentary%20history%20%20colonial%20new%20york

ニューヨークの公文書の問題は、議会史料が乏しいことです。参事会議事録は活字化され、オンライン化もされていますが、内容がすごく薄いのが特徴で、Documents Relative to the Colonial History of the State of New-Yorkを見れば内容はわかります(NYは総督が参事会を選任し、総督の権限が強かったことも理由でしょう)。https://archive.org/details/journaloflegisla02newy

代議会については活字化もされていません。ただし同時代に印刷されたものがまとめられてECCOから出版されています。これは財務報告も含んだかなりしっかりした史料なので、有用です。興味ある人は言ってください。(森)





2022年6月15日水曜日

University of North Carolina Pressのセール

 University of North Carolina Pressが創業100周年ということで大型セールをやっています(https://uncpress.org/anniversary-sale/)。全商品4割引で、アメリカ国内は無料配送というなかなかのセール。とはいえアメリカ国外は送料が最初10ドル、以下一冊ごとに6ドル以上かかるし、なおかつ円安なので、結局、割引分は相殺でしょう。Amazonの洋書も狂ったように送料が上がっていて、苦しいです。まずは初期アメリカ分野のカタログを見て楽しむのがいいかも。知らない本が出まくっていてキリがない。

https://uncpress.org/search-results/?category=UNCCREEAH



これはペンシルヴァニアの先住民外交に関する大学生向けのアクティブラーニングの教科書のよう。七年戦争時の先住民との戦争をペンシルヴァニアがどのように外交で終息させたかを会合や条約など複数の史料を読みながら再現する、と。複数の言語、文化、感情、利害が絡む先住民外交史上に残る名場面。面白い授業になりそう。初期アメリカ関係でシリーズ化されているみたいです。

2022年6月13日月曜日

Creek Internationalism in an Age of Revolution, 1763-1818

来月出る本。クリークがヨーロッパ外交を展開し、国際承認を受けて独立国の地位を得て、領土の保持を図ろうとしていた、と。うーむ興味深い。先日の初期アメリカ分科会の内容の前史ですね。

https://www.nebraskapress.unl.edu/nebraska/9781496215185/

Creek Internationalism in an Age of Revolution, 1763–1818


文書館予約はお早めに

この夏は調査だという方もおられるでしょうか。

お目当ての文書館の予約は早めが良いです。今はまだコロナ対応で席数が限られているところがあります、要確認。

ニューヨークですと、NY Historical SocietyとコロンビアのRare Book Manuscript Libraryは混み合っています。 調査が近づいてからあわてるのは愚かな私だけかもしれませんが、ご参考までに。(松原)

2022年6月12日日曜日

Early American Indian documents : treaties and laws, 1607-1789

 植民地時代−革命期の先住民−ヨーロッパ人外交に関して、非常に有用な史料集はEarly American Indian documents : treaties and laws, 1607-1789です。以下のように植民地ごとに先住民との条約が収録されています。それだけでなく、この史料集が充実しているのは、複数の史料集から条約に関連した史料が転載されている点です。例えば下の図は、アベナキとイギリスの条約会合に同席していたフランス人宣教師がフランスに報告しているもので、Jesuit Relatiosという有名なイエズス会史料集からの転載です。イギリス側史料ではアベナキは素直に従っているのに対して、ここではアベナキがイギリス側に「(自分達の意志を認めないなら)ここから出ていけ」と言ったと書かれています。したがって、条約成立の経緯や複数の見方を知ることができます。同時にこうした関連史料についても編者が解説している点が有用性の高さの一つです。

ただし、さほど出版が古くないにも関わらず、絶版になってしまい、日本国内の所蔵もごく一部です。幸運なことに、Internet Archiveで公開しています(ただし、登録して貸し出しをせねば見られません)。興味ある方は是非どうぞ。

https://archive.org/details/earlyamericanind0005unse

Vol 1: Pennsylvania and Delaware treaties, 1629-1737 edited by Donald H Kent --
Vol 2: Pennsylvania treaties, 1737-1756 edited by Donald H Kent --
Vol 4: Virginia treaties, 1607-1722 edited by W Stitt Robinson --
Vol 5: Virginia Treaties, 1723-1775 edited by W Stitt Robinson --
Vol 6: Maryland Treaties, 1632-1775 edited by W Stitt Robinson --
Vol 7: New York and New Jersey Treaties, 1609-1682 edited by Barbara Graymont --
Vol. 8: New York and New Jersey treaties, 1683-1713 edited by Barbara Graymont --
Vol. 9: New York and New Jersey treaties, 1714-1753 edited by Barbara Graymont --
Vol. 10: New York and New Jersey treaties, 1754-1775 edited by Barbara Graymont --
Vol. 11: Georgia Treaties 1733-1763 edited by John T. Juricek --
Vol. 12: Georgia and Florida treaties, 1763-1776 edited by John T. Juricek --
Vol. 13: North and South Carolina treaties, 1654-1756 edited by W. Stitt Robinson --
Vol. 14: North and South Carolina treaties, 1756-1775 edited by W. Stitt Robinson --
Vol. 14: North and South Carolina treaties, 1756-1775 edited by W. Stitt Robinson --
Vol. 15: Virginia and Maryland laws edited by Alden T. Vaughan and Deborah A. Rosen --
Vol. 16: Carolina and Georgia laws edited by Alden T. Vaughan and Deborah A. Rosen --
Vol. 17: New England and Middle Atlantic laws edited by Alden T. Vaughan and Deborah A. Rosen --
Vol. 18: Revolution and confederation edited by Colin G. Calloway --
Vol. 19: New England treaties, Southeast, 1524-1761 edited by Daniel R. Mandell --
Vol. 20: New England treaties, North and West, 1650-1776.

2022年6月10日金曜日

The Writings of James Monroe

Founders Onlineを挙げて下さったので、そのメンバーに入っていないJames Monroeのオンラインで読める史料として、以下、The Writings of James MonroeのURLになります。(HathiTrustにもありますが、そちらは限定公開)

I. 1778-1794
 https://archive.org/details/writingsjamesmo03unkngoog/
II. 1794-1796.
 https://archive.org/details/writingsofjamesm015856mbp/
III. 1796-1802.
 https://archive.org/details/writingsjamesmo09monrgoog/
IV. 1803-1806.
 https://archive.org/details/writingsjamesmo03monrgoog/
V. 1807-1816.
 https://archive.org/details/writingsjamesmo00unkngoog/
VI. 1817-1823.
 https://archive.org/details/writingsjamesmo08monrgoog/
VII. 1824-1831
 https://archive.org/details/writingsjamesmo05monrgoog/

検索するのは簡単なのですが、どのファイルがどの巻かわかりづらいのでリストにしておきます。
2000年代以降にThe Papers of James MonroeシリーズがGreenwood社より刊行されていますが、The Writings of James Monroeとは掲載史料が異なります。
https://academics.umw.edu/jamesmonroepapers/publications/publishedcorrespondence/

(遠藤)

アレクザンダー・ハミルトンの少年時代の足どり

「建国の父たち」の中でも、特に雄弁で活力に満ちていたハミルトンですが、彼が少年時代を過ごした西インド諸島での日々は、ハミルトン自身も口を閉ざしがちで、ネイヴィス島で生まれたらしいということ以外は、はっきりとしたことは近年まで分からないことが多かったのです。

彼の少年時代の記録が意外(?)なところから不完全ながら辿れるようになりました。

ハーグのDutch National Archivesに少年時代の彼の家族の納税記録が発見され、それをつなぎ合わせていくと、St. Kitts、St.Eustatius、St.Croixなど西インド諸島の島々でのハミルトンの足どり、一緒に過ごしていた家族の諸事情(ハミルトンの伝記で欠けていたピース)が埋まり始めました。

オランダでのアーカイブス・ワークの成果をまとめたものとして手に入りやすいのは、下記の文献です。

Michael Newton, Discovering Hamilton: New Discoveries in the Lives of Alexander Hamilton, His Family, Friends, and Colleagues From Various Archives Around the World (Phoenix: Eleftheria Publishing, 2019)

また、本研究に触発された論文としては下記があります。入手しやすいように書籍に収録されたものを紹介します。

Ruud Stelten and Alexander Hinton,  “Alexander Hamilton's Missing Yearns: New Insights into the Little Lion's Caribbean Childhood,” Don N. Hgist, ed., Journal of The American Revolution: Annual Volume 2021 (Yardley, Penn.: Westholm Publishing, LLC, 2021), 1-10.

これらの研究には、単に少年時代のハミルトンの足取りにより接近できるという以上の示唆があります。それは、これまで「建国の父たち」の多くがアメリカ大陸に根を張っていた名望家たちだったのに対して、ハミルトンは「境界域の人」だったという認識が改まるところにあるように思われます。西インド諸島の島々は、環大西洋世界における国際政治の最前線であり、文化・思想の先端であったということです。近年の初期アメリカ研究の潮流から、「建国の父たち」を再検討するのは可能であるし、より豊かな視野を与えてくれるように考えます。(石川)




Founders Online

普段の研究で重宝していたのが、Yale University Pressがオープンアクセス化していたThe Papers of Benjamin Franklinのオンライン版(https://franklinpapers.yale.edu)ですが、現在はNational Archives管轄下のこちらにいつの間にか移行していたようです。

https://founders.archives.gov

こちらはすごい!規模も質も大幅に向上しているようです。まず、フランクリンだけではなく、ジョージ・ワシントン、ジョン・アダムズ、トマス・ジェファソン、アレグザンダー・ハミルトン、ジョン・ジェイ、ジェイムズ・マディソンの7名の建国の父の、現在最も信頼できる全集や著作集がクロス検索できるようになっています。Franklin Papersについては、以前のオンライン版では校訂注が見られなかったのですが、Founders Online版では見られるようになっています。わざわざ紙版の全集に当たる必要がなくなってしまった。。。

初期アメリカ史は森先生が紹介している州のアーカイブスも含めて、オープンアクセスのアーカイブスがどんどん増えている(かつ内容もどんどんアップデートされる)ので、こういった場でちょこちょこと気づいたものを紹介できると良いですね。

投稿の練習も兼ねての初投稿でした。(鰐淵)

2022年6月9日木曜日

McNeil Center seminars 研究会案内2

言わずと知れたペンシルヴェニア大McNeil CenterのFriday seminars。当分ハイブリッドでやってくれそうですが、時差がちょっときついです。

それでもこのMcNeil Centerはすばらしい環境でした。ポスドク・フェローを10人以上かかえて、いつも活気のある議論になります。院生さん向けのブラウンバッグ・セミナーもあり、Zoomが普及した今ならこれも真似したいと思いました。(松原)

Brett Rushfordについて

私がTwitterでフォロー中の Brett Rushfordは最近の初期アメリカ史のリーディングヒストリアンの一人で、そして近年の初期アメリカ史の傾向の象徴的存在です。 フランス領カナダにおける奴隷制を介した先住民とフランス人の関係史で非常に優れた研究をして脚光を浴びましたがhttps://www.goodreads.com/book/show/13790947-bonds-of-alliance、最近はカリブの島マルティニクの逃亡奴隷と奴隷反乱の研究をやってます。https://oieahc-cf.wm.edu/wmq/Jan19/abstracts.html

実際、こうした研究者が増えていて、例えば、独立革命期ヴァジニアの軍事動員について極めて優れた研究をしたMichael Macdonnell(珍しくニュージーランドの人)は、最近は中西部の先住民について、これまた新しいタイプの研究をやって注目を浴びていますhttps://www.michaelamcdonnell.org/masters-of-empire

先住民−ヨーロッパ人関係史の大家Eric Hinderakerも最近は大西洋史から見るボストン虐殺の研究をしてるし。こうしたVastな初期アメリカ史に多方面から切り込む人が目立ちます(かつてはニューイングランドとヴァジニアの両方という研究者が多かったです。ベイリンもモーガンもブリーンも)。面白い傾向だけど、もうフォローするのすら大変。イギリス人の植民地の発展だけやっていた昔を懐かしむ人がいるのもわかる気がします(それを主張すると叩かれるし…)(森)


2022年6月7日火曜日

研究会案内1

The Seminar on Early American History and Culture@Columbia University

コロンビアのHannah FarberとCUNYのJohn Blantonとが世話人の月例研究会。

コロナ禍を経て、いまはハイブリッド型で運営されています。冬時間になれば日本からも朝7時台に参加可能。小さな研究会でじっくり話ができます。

(以上、投稿の練習を兼ねて。松原)

初期アメリカ史関係の雑誌リンク

 初期アメリカ史関係の雑誌リンクをまとめておきます(最近増えた気がします。追いかけるのが大変・・・)。リンクにも載せています。しかし国内に所蔵大学がない雑誌も多い現状はどうしたものか。

Journal of Early American History

https://brill.com/view/journals/jeah/jeah-overview.xml

William and Mary Quarterly

https://oieahc.wm.edu/publications/wmq/

Early American Studies

https://eas.pennpress.org/home/

Journal of Early Republic

https://jer.pennpress.org/home/


2022年6月6日月曜日

17-18世紀のボストン市の史料

 オープンリソースのボストン史の史料をまとめています。議事録なので情報は必ずしも多くないですが、タウンミーティング議事、人事まで幅広く記録されています。課税者名簿、救貧行政、防衛、治安などの情報も多くて独立前の都市社会史の研究に使えると思います。https://fukuoka-u.box.com/s/zxecvsviwjz465qizy68pbhah3deodi7

西京高校授業:海賊と植民地アメリカ

 1月に山口県立西京高校の歴史の先生のオンライン授業でコメントをした際のパワポです。レディカーは海賊の出自や経験を特定の階層に求めるけど、「大西洋の向こう」は、海賊/民間船の私掠、兵士/民間人、合法/非合法、被害者/加害者といった境界線はしばしば揺らぐ場所ではないかという内容。

https://docs.google.com/presentation/d/1zpthDqDxnJt6kD-eOclkFOKe3lcp0vcx/edit?usp=sharing&ouid=113242651500869917444&rtpof=true&sd=true

これは戦時中マサチューセッツは民間人なら誰でもインディアンを殺して報奨金を出すという法律。民間人も兵士=殺人者になることを許可されている。だからこそハナ・ダンストンのような女性のインディアン虐殺者が英雄になるわけで。





Mori

昨年の非国家地域の外交研究会報告レジュメ(「「同盟」と「臣従」のあいだ」)

昨年、非国家地域の外交研究会で行った森の報告レジュメと資料です。オンラインだったので反応がよくわからないまま・・・。

https://docs.google.com/document/d/14_Y6bB9P8ug3fvuC6wd9sU2rVHBQjDoO/edit?usp=sharing&ouid=113242651500869917444&rtpof=true&sd=true

https://docs.google.com/presentation/d/1Fgf6KRddj_MDCErw30pxY_pIw2-h1mtX/edit?usp=sharing&ouid=113242651500869917444&rtpof=true&sd=true

Journal of House of Representatives

 マサチューセッツは代議会の議事録は活字化されていましたが、現在は絶版です。幸い、以下のサイトで閲覧ができます(ダウンロードは大きく制限されています)。ただし1715年以前は火災などで喪失してしまっています(一定期間までは下記のCSPCに掲載されています)。とはいえ、マサチューセッツの政治・行政の基礎史料であることは間違いありません。

https://catalog.hathitrust.org/Record/000532438

Massachusetts Archives Collection

 マサチューセッツ州立文書館に所蔵されている植民地時代−革命期の政府史料は数年前から全面的にデータベース化されています。以前は現地に行かなければならなかった史料に簡単にアクセスできるようになりました(数ヶ月間、写真を撮ってデータを集めたあの苦労はなんだったのか・・)。総督の布告、参事会議事録、裁判、政府に集まった情報、軍事遠征の報告などなど、無数の情報があり、宝の山です。リンクをたどると他の史料も豊富に掲載されています。

▷1699年のインディアン蜂起陰謀の情報を密告する総督宛の手紙


Family Serchの登録が必要。

https://www.familysearch.org/en/wiki/Massachusetts_Archives_Collection

Calendar of State Papers

 オープンソースの史料Calendar of State Papersのデータをまとめています。1740年までの植民地-本国間で交わされた公式文書のうち、British LibraryのColonial Office:America and West Indiesに収められた史料のダイジェストです。

https://fukuoka-u.box.com/s/j41yughibxzzp8yfcfigkv925d612gp8

2022年6月5日日曜日

開設について

初期アメリカ史研究者のためのブログを開設しました。研究者の皆さんに投稿してもらい、相互に情報共有していきたいと思います。